飛躍の瞬間を視逃すな オールスター特集 2012交流戦総括 2012交流戦展望

飛躍の瞬間を視逃すな


特集コラム飛躍の瞬間を視逃すな

30 武田 翔太

福岡ソフトバンクホークス

2012.08.24公開 文: 武山智史

ホークスに現れた期待の新星・武田

7月7日、札幌ドームでのファイターズ戦。1回裏のマウンドに、プロ初登板となるホークスの高卒ルーキー・武田翔太が上がる。投球練習後、一塁手のベテラン・小久保裕紀の力強い激励に、武田はニッコリと笑顔でうなずいた。

バッターボックスに入るのはファイターズの1番・田中賢介。武田はセットポジションから、ゆったりとした投球フォームで捕手・高谷裕亮のミットへとストレートを投げ込む。「力でねじ伏せようと思った」と真ん中に投じたボールは、田中が見送りストライク。スピードガンは151キロを計測した。

高卒1年目のピッチャーにとって、どうしても緊張を隠せないであろうこの場面。武田は動じることなく、普段通りのリラックスした雰囲気でマウンドへ臨み、その肝っ玉の強さを見せつけた。

初回を無失点に終えた武田は、150キロを超えるストレートと変化球のコンビネーションで2回、3回、4回といずれも打者3人で料理。味方の失策で走者こそ出すも、やはり動じない。

5回は稲葉篤紀、陽岱鋼から連続三振を奪うなど、勝利投手の権利を得る。6回、先頭の鶴岡に初の被安打となる中前安打を打たれるも、後続を封じて得点は許さず。

武田は6回、93球を投げ被安打1、奪三振4、与四死球2、無失点。高卒ルーキーとは思えない、堂々とした投球内容。その後救援陣がリードを守り抜き、うれしいプロ初先発初勝利を挙げた。ホークスの高卒新人投手では、実に31年ぶりの快挙となった。

「うれしいの一言です。自分のリズムでしっかり投げることができたので、今後も続けていきたいです」。試合後のヒーローインタビューでも武田は落ち着いた雰囲気で話し、笑顔を浮かべながら自身の投球を振り返った。ホークス先発投手陣に、頼もしい新たな若い力が加わった瞬間だった。

「九州のダルビッシュ」として注目を集める

武田は宮崎日大高校時代、190センチ近い身長と150キロ近いストレートを投げることから「九州のダルビッシュ」と呼ばれ、プロのスカウトから注目を集める存在となった。

3年夏の宮崎大会準々決勝、鵬翔高戦では9回まで2ケタ三振を奪う好投を見せるが、脱水症状のため足をつってしまい、悔しい途中降板。後を受けたピッチャーがサヨナラ打を打たれて0対1で敗戦し、甲子園の夢はついえた。

全国区とはならなかったものの、迎えた秋のドラフト会議、地元・九州のホークスがドラフト1位で武田を単独指名。12月の新入団選手発表会見では「速球で三振も取りたいですが、頭を使った投球ができるピッチャーになりたい」と意気込みを語り、プロでのスタートを切った。

2,3軍で早々に結果を残し、1軍へ

地元・宮崎での春季キャンプは若手中心のB組でスタート。体作り中心のメニューでじっくりと鍛えた。

初の実戦登板となったのは、4月5日に行われた3軍交流戦の対沖データコンピュータ教育学院戦。先発した武田は、2三振を奪うなど1回無失点で終えた。その後も3軍交流戦を中心に登板し、試合経験を重ねていく。

ウエスタン・リーグでは6月10日のバファローズ戦で初先発。5回1失点で試合を作ると、その後も20日のバファローズ戦で5回無失点、本拠地・ヤフードームで行われた26日のドラゴンズ戦は5回2失点。まずまずの投球内容で先発の役割を果たし続け、1軍への距離を着実に近づけた。

そして7月7日、七夕のプロデビュー戦。北の大地・札幌で、その若き力は日の目を見ることとなる。